大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成9年(ネ)2285号 判決 1998年1月29日

控訴人

コニカ株式会社

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

山田正明

控訴人補助参加人

株式会社三和銀行

右代表者代表取締役

右訴訟代理人弁護士

小沢征行

秋山泰夫

香月裕爾

露木琢麿

宮本正行

吉岡浩一

北村康央

被控訴人

右代表者法務大臣

下稲葉耕吉

右指定代理人

齊木敏文

山岡千秋

原義男

中川孝則

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は、補助参加によって生じたものは補助参加人の、その余は控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人の請求を棄却する。

二  事案の概要

次のとおり付加するほかは、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」に記載のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一七頁一一行目の次に、次のように加える。

「(四) また、本件代物弁済条項の趣旨は、譲渡担保権の設定が国税の法定納期限後になされたものであっても、徴収法に基づく告知書が譲渡担保権者に到達する前に譲渡担保権の実行が完了していれば、譲渡担保財産に対する滞納処分は執行することができないという徴収法の解釈を前提として、告知書の発信時に譲渡担保権の実行を終了させることにより、手形割引の場合と同様の機能を果たす一括支払システムにおいて、金融機関の物的納税責任を排除し、手形割引の場合と同様の法的地位を契約の当事者に確保させることにある。

ところで、本件のように、滞納処分が先行する場合において、譲渡担保関係の存否を差押時を基準に判断するという解釈を前提とした場合には、差押えは、告知処分が先行する場合における告知と同様の機能を果たすことになるのであるが、右条項の趣旨からすれば、告知処分が先行する場合のみにその効果が及ぶ範囲を限定することは、当事者の意思解釈として合理的でないから、右条項は、滞納処分が先行する場合には、訴外信金が本件差押処分の発信時に譲渡担保債権で当座貸越債権の代物弁済を受けるものと解釈して、類推適用されるべきである。

したがって、本件債権は、本件の債権差押通知書が到達した平成六年一月七日においては既に譲渡担保財産ではなかったから、本件差押処分は無効である。」

2  同一九頁七行目の次に、次のように加える。

「なお、控訴人は、本件代物弁済条項について、本件差押処分の発信時に譲渡担保債権で当座貸越債権の代物弁済を受けるものと解釈して、類推適用されるべきであると主張するが、そもそも本件代物弁済条項は、訴外信金、控訴人及び滞納会社との契約条項であるから、合意が欠けているのであれば、その部分について何の効力も生じないことは当然であり、法律と異なり、類推適用の問題は生じない。

仮に、右主張が契約当事者の合理的意思解釈により黙示の合意を主張するものであると善解しても、次の(二)で述べるところと同様の理由により、無効である。」

三  争点に対する判断

次のように付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由の「第三 争点に対する判断」に記載のとおりであるから、これを引用する。

原判決二九頁一行目の「受任する」を「受忍する」に、同三四頁九行目の「右条項によれば」を「仮に右条項が有効であるとすれば」に改め、同三六頁九行目の次に、次のように加える。

「なお、控訴人は、本件代物弁済条項は、滞納処分が先行する場合には、訴外信金は、本件差押処分の発信時に譲渡担保債権で当座貸越債権の代物弁済を受けるものと解釈して、類推適用されるべきであると主張する。しかしながら、本件代物弁済条項が徴収法二四条各項の規定を念頭に置いてこれに対処するために設けられたものであることは、右条項の内容及び弁論の全趣旨に照らして明らかであるところ、同条は滞納処分が先行する場合の処理についても規定しているにもかかわらず、本件代物弁済条項には、この場合について何ら特別の取扱いをする旨の約定がないのであるから、右条項は、この場合についても、告知処分の時を基準として代物弁済の効力を発生させる趣旨であると解するほかはなく、控訴人の右主張は、採用することができない。

四  結論

よって、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとする。

(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 柳田幸三 小磯武男)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例